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守衛室29 [博多なほ子 小説]



沖縄から帰ってから

久里浜さんも

近くにいないし


守衛室にも

もうほとんど

行かなくなって


この新宿の

事務所にいる必要も

なくなってしまったので

事務所をやめた


数カ月後


横浜の旅行会社に

経理の補助として

働き始めた


そして

今の私には


彼の分厚い手紙が

待ち遠しい

ものになった


その手紙の

やり取りの中で


お正月を

二人で過ごそう

ということになり


一月二日


仙台港のフェリー乗り場で

待ち合わせて


三泊四日の予定で

北海道へ

行くことにした



「あなたがいてくれるか’

不安で不安で」


「雪で電車が遅れるなんて

よくあることだから」




こともなげに言った


さっきまでの不安が

彼を目の前にして

雪のように

溶けて消えてしまった


「フェリーは出てしまったから

とりあえず車で

北上しよう


あした野辺地で

フェリーに乗れると思うから」


私の頭には

ここから

北海道へ行くことしか

なかったので


もう

北海道へは行けない

と思っていたため


彼の言葉が意外だったし




ああ

そういう道もあったのかと


このまま

知らない土地の

雪の夜道を

ひたすら

彼の運転に

頼るしかない


港を後にして

運転をしている彼は

疲れも見えないし

機嫌もいい


「車が変わったのね」


「給料から

毎月引いてもらっているよ

他に何かに使う

わけでもないから」




真面目に

日々仕事をしている

彼を想像してしまう

言葉をはいた後


「裸になって

車の後ろに

寝たら気持ちいいよ」




からかうように

笑って言った


「そんなバカなこと

できるわけないじゃない」




私も笑いながら


国道に出て

二車線になっている

隣の車線に目をやった


こんな時間なのに

かなり車は走っている


ふざけた言葉が

抵抗なく

出てくる


それ程

わだかまりのない

二人になっていることを

お互い

自然に感じながら


今までにない

たわいもない

話を続けているうちに


道が一車線になり

道の両側の民家の灯りも


ポツリ、ポツリ



見えるだけになってきた


雪道が一層

自然の中へ

溶けこんで

行くように見えた





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